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薬食同源な春の養生
鳥取でアトピー性皮膚炎など皮膚トラブルを薬食同源、漢方のお薬、スキンケアで根本的な改善のお手伝いをしているイヌイ薬局の乾(いぬい)です。
私たちのイヌイ薬局には毎年1000件以上のアトピーに悩む方が相談に来られます。
いつもは、その相談のなかで気がついたことをこのブログで詳しくお伝えしていますが、今日は春の養生についてお伝えします。
季節に合わせた生活をすることは、アトピーの方に限らずどなたにも健康長寿のためにオススメします。
2021年は2月3日に「立春」を迎え暦の上で春を迎えました。
「立春」では、天の気は春にむかいますが、地の気にはまだ寒さが残り、暖かい日と寒い日が入り混じる三寒四温の季節になります。
そして、 雪が雨にかわる「雨水(うすい)」、冬眠していた虫さんが目覚める「啓蟄(けいちつ)」、春真っ只中となる「春分(しゅんぶん)」、穀物を育む雨が降り始める「穀雨(こくう)」、夏の気配が始まる「立夏」を続いて迎えます。アトピーの肌に悩む方は勿論一般の生活者のみなさんが、夏を元気に過ごすには、春の養生が大切です。
春の養生ポイントは「陽気」
「春生」といって、春は夏に向かって身体の「陽気」を十分養うことが大切です。 でも同時にその「陽気」が上昇し過ぎるないように整えておくと気の巡りを良くすることができます。
春の3ヶ月は八珍(ハッチン)と言われ、苗など地下に隠れていたものが芽生える時期です。
まずは早寝早起き、天地ともに生じ万物は生き生きと栄えるので早寝早起きをしましょう。春は、まだ風邪や花粉症などに感染しやすいので、免疫を高めるためにも早寝早起きは大切です。
また、庭などゆっくり散歩し、髪などを解き身体を締め付けている物を緩め体をゆったりとさせることで、春には不安定な「気」がめぐりやすくなります。
リラックスした生活は精神を安定させ、ストレスなどの影響を受けやすい「肝」の機能を充実させます。「肝」が充実していると「気」は安定してめぐりやすく「血」を貯蔵しやすく 「消化機能」も安定します。
そして、自然と調和しましょう。志の生じる時期でもあるので、生育するものを生かして、決して滅ぼさないようにこころがけましょう。生育に必要なものは与えても奪はないこと。自他ともに春の陽気を大切に育てることが春の養生の基本です。
「人は自然と調和すると美しくなります。」
春の食事について…食養生
春の季節の食事の原則は少寒多温
「陽」の生育を助けるため「冷やすもの」を少なめに「温めるもの」を多めに口にしましょう。
本来の食事養生の基本は、「春夏養陽、秋冬養陰」といって、春と夏は「陽」を大切に養い、秋と冬は「陰」を大切に養うことで身体全体の「陰陽」のバランスを取ります。
春夏は「陽」を補う
ネギ、紫蘇、ニラ、ニンニク、シナモン、フェンネル、生姜などや、さらに、補気温陽に良い鶏卵、エビ、牛肉、鶏レバー、キクラゲ、しいたけなどがおすすめで、冷たい水やアイスクリームなどは寒性のため陽気を抑えるので極力避けましょう。
春の季節の飲み物の原則は少酒多茶
春の飲み物は「お酒を少しとお茶をたっぷり」が原則になります。春にお茶をよく飲むことで、冬の間に体内に溜まった寒気を追い出し「陽気」を活発にすることができます。水分を十分に補給すると血液循環量が増して、老廃物の排泄代謝が活発になり、肝臓の解毒作用の負担が減ります。お酒を控えめにしてお茶を多飲すると、春に不安定な「肝」を助け、胆汁などの分泌も盛んになって消化を促進します。春はナツメのお茶、生姜のお茶、ケツメイシのお茶などがおすすめです。
アルコールはもちろんですが、チョコレート、ココア、唐辛子、カレーなどは花粉症、アトピー性皮膚炎、高血圧の人には好ましくないので避けましょう。
春の味覚…五味五食の酸
春は五味のうち酸味を適当に取るよう心がけます。たとえば、酢の物、レモン、柑橘類、いちご、梅干、紫蘇、春菊 などで、適当な酸味は、肝の働きを良くし、体の疲れをとり、イライラを抑え、目の疲れを癒し、眠りを深くして、胃腸の働きを高めてくれます。
特に、春は少なめの酸味とたっぷりの甘味で消化器を補うと良いので、なつめ、山芋など甘味の食物をこころがけて脾胃を助けましょう。チョコレートは甘いのですが、特にテオブロミンという成分を中心に中枢神経や心臓に影響を及ぼしますので、バレンタインチョコが残っていても要注意です。
食材を五色で考えると野菜を中心に緑色のものをとるように心がけましょう。以下おすすめです。
アスパラガス、グリーンピース、たけのこ、ふき、山椒、わらび、ぜんまい、うど、よもぎ、たらの芽、菜の花、春キャベツ、セロリ、春菊、みつばなど。
また肝機能に良い食材として、豚レバー、鶏レバー、きのこ、たけのこ、クコの実、なつめ、かんきつ類などもオススメです。
春の漢方について
カゼと花粉症の回復には川弓(センキュウ)や、葛根湯、銀翹散、玉屏風散、小青竜湯、板藍根などの漢方薬を補います。です。頭痛があれば、葛根湯より川弓茶調散(センキュウチャチョウサン)がオススメです。
春は呼吸が大切
春は精神的に不安になりやすいので、良質で豊富な血液を増やして落ち着かせてくれる帰脾湯、酸棗仁湯、温胆湯、天王補心丹、加味逍遥散、ジョ肝丸、仏手柑、マイカイカ、竜眼肉、蓮子心などがオススメです。
それでも血行不良がおきてしまったら、冠元顆粒、婦宝当帰膠、マイカイカなどが、アレルギー体質の改善には玉屏風散、麦味参などがオススメです。
春の生活のなかでの養生は
1衣服について
漢方の古典の名著「千金要方」によれば「春時衣服、下厚上薄」といって、上半身は薄着でも下半身は冷やさないように厚着することと言われています。日本でも頭寒足熱(ズカンソクネツ)などと言われるのはこの辺が原点でしょうか?特に虚弱体質の人は背中を冷やさないようにこころがけて、万一からだが冷え込んだら背中からあたためましょう。
2春眠のあかつきについて、春困解消
日本では、「春眠あかつきを覚えず。」といって春は眠い季節ですが、中国でもこんな風に春になんとなく頭がボーッとすることを「春困(シュンコン)」といいます。これは病気ではなく、季節の変化によって、冬のあいだに収縮していた全身の血管が春になって暖かくなるにつれて、血管や毛穴が広がり血液の流れが増加するため、脳に送られる血液が相対的に減少するので春眠が起こります。
春眠=春困のお手当としては十分な睡眠が第一で、起床直後に冷水で顔を洗顔して脳や皮膚を刺激したり、頭部をブラシで繰り返し梳って脳血流を回復させたり、「太陽」のツボを刺激するなどの方法があります。
3春の養生…花粉症の予防について
うがい: 風邪やインフルエンザだけではなく花粉症もウィルスとおなじように必ず喉や鼻など上気道の粘膜から侵入するので、2~3時間おきにこまめにうがいをすると、花粉やウィルスを物理的に洗い流します。特に、鼻炎が気になる場合には鼻と喉の付け根を意識して行います。
手洗い: 手についた花粉やウィルスを洗い流すため、外出先から帰ったら手洗いを励行します。
加湿: 春はまだ乾燥していることもあるので、加湿器などで室内の乾燥をふせぐことも忘れずに。
4精神の安定
陰陽五行説から考えると春は「肝」が不安定になりやすい季節です。さらに、入学、就職、転職などの生活環境の変化から受けるストレスは「肝」にダメージを与えやすく、心身のコントロールが乱れると夏になって様々な症状が現れてしまうことがあります。また、「肝」の状態は精神状態に大きな影響を与えるため、「憂鬱症」や「五月病」などの人は天気の変化などによって症状が悪化したり、発作を起こすことがあるので、リラックスできる照明や空間を作ったり、音楽に合わせて五感に働きかけると「憂鬱症」や「五月病」の安定に効果的です。
5運動による養生
春は、「陽気」を養う季節ですが、身体を動かさないと「陽気」が身体全体にうまく巡らないで、身体の上部に停滞しやすくなってしまいます。
適度な運動をして、体内の「陽気」を動かし快い汗をかくように心がけましょう。 朝は日の出とともに起きて活動をはじめ、昼にむかって活動量を増やし日没とともに静かな時間を過ごしたり、少し早く起きて一駅余分に歩くなどすると良いでしょう。
また、香はうまく使うと脳を直接刺激して精神的に整いやすくなります。春には香たつ花々が多いので、ゆったりした気持ちで散歩しながら咲き誇る花々の香りを嗅ぐだけでリフレッシュできます。起床時や就寝時の乾布摩擦は上半身の血行を良くし、血圧も安定しやすく、免疫も整いやすいので花粉症の予防や改善にもおすすめです。
まとめ
長くなりましたが、やはり春は「陽気を養って行くこと」が大切で、そのためには 「自然と調和した生活を過ごす」 ことがコツです。
難しく考えるより、節の旬の食材を口にして、太陽の運行に従って寝起きして、こころ穏やかに過ごしましょう。
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